こんにちは。安泰漢方鍼灸院の稲葉です。
秋の空気が澄み渡り、朝晩の風に少し冷たさを感じる季節になりましたね。
最近、施術室で患者さんとお話をしていると、
「やることが多くて息がつまる」
「つい自分を責めてしまう」
——そんな声を耳にすることが増えました。
実は、東洋医学の視点から見ると、
こうした“自分を責める心”は 『肝(かん)』の気が滞っているサイン でもあります。
今日は、秋の心を整える「自分を責めない」というケアについてお話しします。
🍃 「がんばりすぎる心」は、身体にも現れる
秋は自然界でもエネルギーが「外から内へ」と沈んでいく季節。
人の心も同じように内省的になり、ふと立ち止まって過去を振り返りやすくなります。
その「振り返り」が長く続くと、無意識のうちに「反省」や「自己否定」に傾きがちです。
そんなとき、体にもさまざまなサインが現れます。
- 肩や首のこり
- 頭の重だるさ
- 眠りが浅い
- 胃の張りや食欲不振
これらは東洋医学でいう「肝」と「脾(消化器)」が疲れている状態。
心のストレスが、体の巡り(気血)を滞らせているのです。
🌿 東洋医学の考え方:「気」が流れると、心もほぐれる
東洋医学での「肝」は、西洋医学の肝臓よりも広い意味を持つ臓。
その役割は「疏泄(そせつ)」――つまり、体と心のエネルギー(気)の流れを調整することです。
この流れが滞ると、イライラ・ため息・不安・自己否定といった感情が生まれ、
気が上に昇りやすくなって、頭痛や不眠、胸のつかえなどの不調にもつながります。
つまり、「心が固まる」と「体も固まる」。
だからこそ、心と体の両方を“やさしくゆるめる時間”が大切なのです。
☕ 院長おすすめセルフケア:「温める」と「ふれる」
私自身も、疲れがたまった日や気持ちが沈む夜には、
「温める」ことと「ふれる」ことを意識しています。
たとえば、
- 湯たんぽをお腹にあてて深呼吸する
- 手のひらで胸の真ん中(膻中〈だんちゅう〉)をゆっくりなでる
- 足首の上にある「三陰交(さんいんこう)」にお灸をする
これらのケアは、どれも“肝”と“脾”の気の流れを整え、心身をほぐしてくれます。
特に、手のひらやお腹の温もりは、自律神経を落ち着かせる効果があり、
「自分を責める」モードから「自分をゆるす」モードへと自然に切り替えてくれます。
ほんの5分でも、静かに呼吸しながら自分の体に触れるだけで、
体の奥から温かさが広がり、心がふっと軽くなるのを感じられるはずです。
🍵 「ゆるめる時間」が心の回復を早める
現代は、常に何かを「しなければ」と感じる時代。
SNSや仕事、人間関係の中で、
知らず知らずのうちに“他人軸”で動き続けている人が多いように感じます。
でも、東洋医学では「自然に逆らわないこと」が健康の基本です。
秋は“収める季節”――つまり、「手放し」「休む」ことが養生になります。
ゆるめる時間をつくるだけで、
脳も体もリセットされ、免疫やホルモンの働きも整っていきます。
忙しい毎日の中で、
- お茶をゆっくり淹れる
- 窓を開けて深呼吸する
- 湯船に浸かってぼんやりする
そんな小さな行動こそ、東洋医学の“やさしい薬”なのです。
🌸 「自分を責めない」は、最高の養生
季節の変わり目は、心と体がゆらぎやすい時期。
だからこそ、完璧を目指すのではなく、
「今日はここまで頑張れた」と、自分をいたわる言葉をかけてあげてください。
東洋医学では、心の安らぎも健康の一部です。
自分にやさしくできる人は、まわりにもやさしくできる――
そんな“しなやかな心”が、秋を穏やかに過ごす鍵になります。
💬 次回予告
明日の【まとめ記事】では、
肌も心も内側から輝く|“巡り”を良くする秋の薬膳的習慣 をテーマに、
血の流れを整える食材(活血食材)と、
気を巡らせる軽い運動のコツをお届けします。
どうぞお楽しみに。